“ジャイアント ロベリア”という植物があることをご存じでしょうか。
もしかすると世界遺産という番組で紹介されたものを見たことがある人がいるかもしれない。今回の話はひとまずこの「ジャイアント ロベリア」について簡単にまとめつつ、その生態と魅力について書いていく。
今回の記事の主な内容は
※今回からはなかなかマニアックな内容になってきます。興味のない人はとりあえずジャイアントロベリアのことを画像検索ぐらいはしてみてほしい。へぇー!!ってなって終わるかもしれないけど。
私がジャイアントロベリアを知ったのはこのブログを書いている今からまさに2か月ほど前のこと。植物の種を扱っているSEED STOCK (☞seed stock / TOPページ)というサイトでのこと。
実際にはPachypodium bispinosum とPachypodium succulentumの種を購入したのだが、あと600円分購入すれば送料が無料になる。ということで何か手ごろな種はないかと探していたところ...
「ロベリア・ベクアエルティ(Lobelia bequaertii)」という種が売られていた。
大体名前を見ればどんな植物かわかるくらいにはいろいろと勉強してきたが、全く見聞きした覚えもない名前に興味を惹かれた。
そしてこの植物を画像検索してみた私は、美しい形態と生態の魅力に一気に引き込まれていくこととなった。
1.ジャイアント ロベリアとはそもそも何か
ミゾカクシ属(Lobelia)キキョウ科の植物群の一部である。
非常に多様な形態を含み、別種ではないかと言われているものも多く、300種以上にも及ぶその植物群の中でも俗にジャイアントロベリア(giant lobelia)と呼ばれるものがある。詳しい品種名などは(ミゾカクシ属 - Wikipedia)でも見てもらえればすぐにわかる。
ウガンダやケニア、コンゴ民主共和国、ルワンダなどの国境となる山々のおよそ標高3000~4000mの高山地帯に生息する植物であり、その標高の高さゆえ気候条件も厳しいものである。
私が今回種を入手したLobelia bequaertiiはウガンダとコンゴ民主共和国の国境に位置するルウェンゾリ山地にて生息している植物である。
ルウェンゾリ山地は、アフリカ中部、ウガンダとコンゴ民主共和国の国境に位置し、その最高峰の標高は5109m。ルウェンゾリの山頂付近は赤道直下にもかかわらず万年雪を冠しており、アフリカ大陸で万年雪を戴くのはキリマンジャロ山とケニア山、そしてこのルウェンゾリだけである。
ルウェンゾリ山地のほとんどは、ウガンダの「ルウェンゾリ山地国立公園」、コンゴ民主共和国の「ヴィルンガ国立公園」として世界遺産に登録されている。
2.Lobelia bequaertii
Giant Lobelia bequaertii plants of the Rwenzori are pretty spectacular!#Rwenzori #RwenzoriTrekking #MountainsOfTheMoon #Uganda #Lobelia #LobeliaBequaertii #Campanulaceae #GiantLobelia #GiantPlants #GiantLobelia #GiantLobeliad #EastAfricanRift #Ruwenzori #botany #AfricanFlora pic.twitter.com/gi8KuAWhnU
— Francis Nge 倪继生 (@jason_nge) 2018年9月19日
ルウェンゾリ山地の3000〜3500 mの高山地帯に自生。この地域は常に雲に覆われているほどの標高であり、朝は晴れて寒く、午後は曇りまたは霧が発生し、夜は晴れて凍りつくほどの寒さに至る。日中の気温は氷点下数度しかない。
枝分かれした地下茎からの赤みがかった色合いで、幅が広く硬い葉のコンパクトな美しいグリーンとパープルが織りなすロゼットを形成。寒い生息地では数十年以上もかけてゆっくりと成熟し、花は巨大な柱のように塔立ちする。
葉のロゼットはしっかりとフィットした葉の間に水の貯水池を保持する。これは、この住みにくい生息地で生き残るための鍵だ。この貯水池は夜には凍結してしまうが、葉が重なり植物の芯を生かしておくのに十分な暖かさを生み出すため生き残り続けてきた。
栽培では巨大なロベリアはまれであるが、熱帯の高地やアイルランド、ニュージーランド、チリ南部、米国北西部沿岸などの温帯の海洋性気候での栽培が行われてきた。
Lobelia bequaertiiの写真を実際に掲載するには、写真家たちが一生懸命この厳しい山地まで足を運び得られたものであり、無料で配られているものはおそらく無い。
写真を掲載するにもお金がかかることを私はこのブログ作りにおいて初めて意識した。
何事も経験ですねほんとうに。
3.最初の失敗
いまここに記す内容はいったん失敗したからこそ反省し、調べなおして書いているものだ。私はR3年5月24日に20個の種を、よく調べもしないでほかのパキポ達同様に用土を準備して蒔いた。種をただ送料無料にするためだけに料金合わせで買った自分は、この時点ではそもそもどのくらいこの植物が希少なのかなど考えることもなかった。
しかし、いくら待っても発芽せず。まだまだ待ってみれば発芽したのかもしれないが、なんと同時期にして最悪の[土にコバエが湧く]という事態に見舞われたこともあり、駆除剤を撒いたりしてしまったため、この希少な種を無駄にしてしまった。
海外の植物であり、世界遺産の地域の植物ともなると簡単に流通しているわけがない。だが今回、種を買うことができたのだから日本国内でも育成及び栽培が可能なはずである。改めて発芽条件などしっかりと調べた上で再度チャレンジしようと思ったのだ。
これまで私は育成の仕方などは当たり前のように雑誌や文献から知識を得てきた。知人が育てていれば直接聞いたり、それでもわからないときはインターネットを開けば誰かがその方法を教えてくれた。ところが...
4.育成方法や発芽方法など、いくら探しても無い。
参加している島根サボテン多肉の会の知人数名に聞いてみたが、ロベリアは知っていてもジャイアントロベリアは分からないとの返答。
Instagramで「Lobelia bequaertii」と検索するとわずか3件の写真がヒットし、そのうち2枚は同じ投稿者である。
Twitterで検索してもInstagramの同じ投稿者の写真が表示されただけであり、日本国内からの発芽状況などは一切情報が手に入らない状況であった。
これはもしや、発芽させ育成可能となった場合、日本人では初の実績となるのではないか。そうとまで考えるほどに情報が不足している現状にあったのだ。
5.火が付いた瞬間
多肉の会の先輩方は、いわゆる難物サボテンを何年もかけて試行錯誤し育成してきた経歴のある方々で、ご年配の方々が多く会の平均年齢も高い。
入会した時にいただいた記念誌はなんと「50周年記念誌」であった。その何十年とかけられてきた情熱の高さと重みを噛みしめながら、読んだ日の晩はなかなか眠ることができなかった。
先輩方の熱意に負けているわけにもいかない。
だらだらと見聞きしたうんちくを語るだけで、自分で育成した実績のないものに深く語る物語などない。ジャイアントロベリアの栽培方法がはっきりしていないのなら、今こそ自分がやってみればいいのだ。失敗に終わるかもしれないが、きちんと記録を残し試行錯誤し努力してみるべきだ。先人として語られてきたのは、いつもそういう人々ではないか。
そうして私は、再びSEED STOCKから種を購入しこの植物の育成に本気で取り組んでみることにしたのである。
続きは次回にて、発芽条件など調べた内容と実際の取り組みについてまとめていくこととする。