※今回もマニアックな内容であるため、途中で読むのに疲れたひとは遠慮なくやめてゲームでもして酒飲んで寝よう。
私はLobelia bequaertiiの画像を探したりしながら膨大なネットの海を彷徨っていた。
そして突然ではあるが、ルウェンゾリ山地の植物生態学についての特徴が書かれている文献のページにたどり着いてしまった。明らかに日本語ではない。
Google翻訳を活用しつつ、播種方法について書かれた海外のサイトや植物生態学の文献も参考にしながら考察も含めた内容を書いていく。
素人の翻訳と考察なので変な部分があれば許していただきたい。むしろスウェーデン語やラテン語を流暢に話し、日本語も話せる友人でもいたらぜひ紹介していただきたい。
1.低温&高湿度で保管し、発芽に至るまでおよそ数か月間。最大で一年もの間かかる
ジャイアントロベリアやジャイアントセネシオの自生地は森林限界を迎えた標高の高い位置にあり、アフロアルパイン生態(Afro-alpine Zone)と呼ばれている。
ルウェンゾリ山地の地質は、付近の山々では主に表層は様々な溶岩を岩盤としているのに対し、谷に位置しているためか地質的な代謝が乏しく、花崗岩や片麻岩、閃緑岩などの始生代の岩石、角閃岩、珪岩などを基本としている。
その表面には火山灰やホコリ、腐植土が細やかな泥となり蓄積され、しっとりと覆っているということだ。その湿度の高さから樹木の表層や地面には苔が茂り、登山者の足を滑らせる危険な場所でもあるそうだ。
Lobelia bequaertiiの発芽のためには細かい砂や堆肥を使用し、冷たく湿った状態を維持する必要がある。そして発芽に至るまでおよそ数か月間から最大で一年もの間かかるといわれている。
その間冷やそうとして冷蔵庫に入れたり、種子を乾かしてはならない。
新鮮な種子は発芽が非常に遅いケースがあるが、発芽のメカニズムを破壊して深い休眠状態に入ってしまう場合があることから、発芽を試みるために人工的な熱を使用してはならないとのこと。
そして、発芽に成功した場合にはできるだけ涼しいところでしっかりと光を与え、水はけのよい土に植えてやると育てることができる。耐寒性があるため冬の寒さには強いが、深部まで凍ることの無いように管理する必要がある。
発芽のトリガーについては概ね理解したものの、日本での発芽報告が全くないという現状に私は正直不安で仕方なかった。
海外での発芽率もおよそ30%と決して高くはないもので、日本のように四季があり、ルウェンゾリ山地のような「低温多湿」を数か月間も維持できる環境を作りだすにはどうすればいいのか頭を悩ませたからだ。
ついにはルウェンゾリ山地の巨大なセネシオやロベリアなどの植物が支配する暗く湿度の高い山中をたった一人で彷徨う夢まで見たほどだ。嘘ではない。
2.なんと国内で発芽報告を発見
実生にチャレンジすると決意してからというもの、GoogleやTwitterで同じようにジャイアントロベリアの実生にチャレンジしている人はいないか毎日のように血眼になって探していた。
一人は「そだレポ」だったか、Loberia bambusetiiの実生を試みているようだったが、4月に播種してからその後の結果は7月現在で更新がない。
7月1日の夜中、Twitterでなんと日本国内ではおそらく初であろう発芽報告を見つけた。
そのツイートは5月20日のもので、これを見つけた時の私の気持ちといったら、もはや思わず誰かにハグしたくなるほどの喜びと安堵感だった。
翌日改めてリプを送ってみると、どうやら植生学を学んでいる大学生で、彼は優しく発芽に至った環境とアドバイスをくれた。
3.発芽温度は低くてOK、ポイントは腰水
ルウェンゾリ山地の温度はおよそ-1~4.5℃、通年して冷涼な環境である。
おそらくこの日本での発芽に関して温度は年中通して問題ない。
発芽報告をしていた彼のアドバイスによると、種子を乾かさないためと、流出してしまわないように腰水で管理するのがいいとのこと。私はおそらくこれが上手くできていなかった。
4.種と用土の消毒
実生の大敵はカビである。最長でおよそ1年間もの間カビと戦わなければならない可能性がありながらチャレンジする気持ちが皆に分かるだろうか。伝われ。
播種の準備として種と土の消毒を行う。
種の消毒はホーマイ水和剤を1000倍希釈して使用し浸け置き時間は5時間。
Lobelia bequaertiiとLobelia wollastoniiの種を50個ずつ蒔く。
50個で買ったはずなのだが、SEEDSTOCKさんは多めに入れてくれている。100個近く実際は入っているのではないか。だいぶ余った。
種はどちらもものすごく小さい。0.5mm以下ほどの大きさだ。
土は播種用の用土と、ピートモスの2種類の方法で蒔いてみることにする。
【ピートモスの消毒】
サカタのタネ:こまかいタネがまける土 ピートバン
近所のホームセンターで購入したタッパー(フタをしたままレンジ可能なもの)
水でふかふかにもどしたら、電子レンジで500W 3分加熱して消毒します。
その後はしっかりと冷めてから播種します。
【播種用土の消毒】
ホーマイ希釈液(1000倍)に浸して管理するため、表面の熱湯消毒のみ施行
今回の用土は以前にTOKYさんで購入していたBANKS Collectionの播種&挿し木用のブレンドソイルを使用。
5.播種
それでは実際に播種していく。
とはいえ細かい種をピンセットで浅く埋めていくだけである。
ブログだと一瞬で完了後の写真を見ることができるが、実際やるのはなかなかの根気が必要だ。なんせ種が細かいのだから、つまんだ拍子に飛んでいきかねない。
ピートバンへの播種はR3年7月3日に実施。
ソイルへの播種は同じ日に時間がとれなかったためR3年7月5日に実施した。
ここからカビに注意しつつ見守っていくしかない。
6.悲報
いったいなんの因果なのか。噂をすればというものだ。
誰だカビフラグとか言ったやつは。デコピンしてやりたい。
まるで四コマ漫画のオチがついたとでもいうかのように白カビが発生した。
R3年7月7日 七夕だというのになんとも幸先の悪い結果である。
Lobelia bequaertiiを播種したほうに白カビがみられる。
wollastoniiのタッパーと、ソイルで播種した方は無事だ。
発生してしまった白カビにはベンレート希釈液を噴霧して対応してみる。
まだ播種して間もないため、いったん直射日光にさらしたりして表層を乾かしてみるというのも有効かもしれない。
原因は種の消毒が不十分であったか、単なるタッパー内の環境的な因子で菌の繁殖につながってしまったか。
種もまだ残っているので再挑戦も可能だが、しばらくはこのままやってみようと思う。
今回も長い内容でしたが、読んでくださった方々ありがとうございます。
次回は発芽までの途中経過をまとめたりカビとの格闘の行く末など、いい結果が報告できるとよいのですが。成功を祈るばかりです。
それでは、また。